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【FXライター高城のFXで稼ぐ方法は勝者に訊け!】誰がFXを殺すのか(レバレッジ規制に関して)

カテゴリ:FXで稼ぐ方法は勝者に訊け![FXライター高城による個人トレーダー取材]

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今週は番外編で、レバレッジ規制に関してです。


突然のレバレッジ10倍報道

来年以降、FXの魅力が大きく損なわれるかもしれない。金融庁が検討しているレバレッジ規制の影響だ。

レバレッジ規制への動きが表沙汰となったのは、9月27日に公開された日本経済新聞の記事だ。

「FX証拠金倍率の上限下げへ 金融庁検討、最大25倍から10倍に」

歯車はすでに回り始めている。「遅くとも2018年中には内閣府令が改正され、2019年に施行という流れでしょう」(大手店頭FX業者A氏)との見通しだ。

2011年に上限25倍となったレバ規制の歯車がなぜ今、再び回り始めたのか。

発端はスイスショックで発生した約34億円の未収金

金融庁の資料からたどると、今回の議論が始まったきっかけは2015年1月のスイスショックだ。スイス中銀の突然の政策変更により、スイスフランが暴落、一時、取引停止になるなどし、日本の店頭FX全体で約34億円の未収金(預けた証拠金以上の損失)が発生した。

海外FX会社に対するインパクトは日本以上だった。海外FX大手アルパリが経営破たん、日本法人のアルパリジャパンでは、個人投資家の資金は信託保全により守られたが、営業を停止した。

また、FXCMでは顧客残高に2億2500万ドルのマイナス残高が発生した。当時のレートで約261億円。日本で発生した未収金をはるかに上回る金額だ。

スイスショックは日本人にとって馴染みの薄いスイスフランでの出来事だったが、もしも円を発端とする「円ショック」が起きたら日本の店頭FX業者に対するインパクトはさらに大きくなるのでは――。

未収金発生状況

店頭FX業者に対する「ストレステスト」の結果は

そこで金融庁は店頭FX業者に対して「ストレステスト」の実施を求めた。ユーロ危機が騒がれていたころによく聞いた「ストレステスト」だが、ざっくりいえば「経営に強い負荷がかかった場合のシミュレーション」だ。

その結果の一部はすでに公表されている。強いストレス(負荷)のかかるショックが起きてカバー先が破たんした場合、自己資本規制比率が法律で定められた120%を下回る店頭FX業者は約2割。しかし、未収金リスクや、カバーをとらずに抱えていたポジションのリスクで自己資本規制比率が120%を下回る会社はなかったようだ。

ストレステスト結果

スイスショック→法人口座レバ規制→個人口座へ

金融庁はこの結果を問題視した。店頭FX業者の経営リスクをどう減じるか――?

その回答がレバレッジ上限の引き下げだった。つまり、今回のレバレッジ規制は個人投資家保護ではなく、「ショック時、店頭FX業者の経営破たんをいかに避けるか」という視点から始まっていることになる。

今年2月、法人口座のレバ規制が強化されたのも同一線上の出来事。「法人口座が済んだから次は個人口座へ」というのが金融庁の思惑だ。

銀行カードローンの総量規制が遠因?

一方で、異なる見方もある。

「注目したいのが10月に起きたメガバンクの『総量規制』。『カードローンが過剰融資になっているのでは』との批判を受けたメガバンクは、『年収の3分の1まで』など自主的に融資額の上限を設けた。『自主的』とはいえ金融庁からの指示があったのでしょう。レバ規制と同じタイミングでの規制となったのは、金融庁の思惑を感じます」(大手店頭FX業者A氏)

金融庁全体がリスクを減じる方向に舵を切っているのかもしれない。

「くりっく365はレバ25倍維持」で調整

さらに違った見方もある。今回の規制が「店頭FXのみを対象とし、取引所FX(くりっく365)は25倍のまま」とする方向で議論が進んでいるためだ。

そもそもなぜ、くりっく365は25倍を維持できるのだろうか?

今回のレバ規制の記事が出てから約20日後、金融庁は説明会を開催した。テーマは「店頭FXのリスクについて」。ここで多くの時間が割かれたのは、取引所FXと店頭FX業者が抱えるリスクの違いだ。

個人投資家はくりっく365を利用する場合、GMOクリック証券やカブドットコム証券など参加業者を通じて取引する。しかし、くりっく365では清算機関が用意されているため、多額の未収金やカバー先が破たんした場合でも、参加業者の自己資本への影響はない。

「ショックが起きてもくりっく365が市場の混乱を起こすことはないだろう。だから、くりっく365は25倍のままでOK、でも店頭FX業者はリスクが高いから10倍」という理屈だ。

「くりっく365優遇」の復活なのか

「そういった理屈はきれいごと。2012年に税制優遇が撤廃されてから苦しんでいるくりっく365の救済というのが実態でしょう。東京金融取引所のトップは代々財務省からの天下りです。金融庁が忖度した結果が今回のレバ規制では」(大手店頭FX業者B氏)

取引所FXへの優遇は以前にも存在した。店頭FXは所得に応じて税率が高まり最大50%となる総合課税だったのに対し、取引所FXは一律20%とする税制優遇だ。2012年に取引所FXへの優遇は撤廃されたものの、再び「くりっく365優遇」への動きが始まっているのかもしれない。

ちなみにくりっく365のスプレッドは米ドル/円で3銭程度。0.3銭が主流の店頭FXと比べるとコストは10倍だ。ハイレバスキャルなど到底できない。

レバ10倍が現実となれば影響は大きい。取引量の減少やスプレッドの拡大、店頭FX業者の経営悪化、海外FXの活発化とトラブルの増加――さらには東京外国為替市場全体の地盤沈下にもつながるだろう。

【ウェブ討論会のお知らせ】

今回の規制強化の動きについて、11月13日(月)20時からウェブ討論会が開催されます。参加するのは、専業トレーダーのひろぴーさんや、為替ディーラーとして活躍した山中康司さんや橋本光正さん、だいまんさん、それに筆者も......。よかったらぜひ下記よりご参加ください。

ウェブ討論会詳細はこちら

ウェブ討論会

今回のコラムは1回完結編となっています。
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