【FXライター高城のFXで稼ぐ方法は勝者に訊け!】山中康司さん(その1)通貨が取引停止になるとき
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今週から、山中康司さんについてのコラムが始まります。
⇒山中康司さん(その1)通貨が取引停止になるとき
⇒山中康司さん(その2)個人とAIが変えた為替市場
⇒山中康司さん(その3)月が赤道を横切ると相場が動く
⇒山中康司さん(その4)ローソク足を追い越す移動平均線
■36年で2回の「通貨取引停止」を経験
「通貨の取引が突如停止される事態を過去2回、経験しました――」
そう振り返るのは、金融業界に身をおいて36年。プラザ合意からアジア通貨危機までディーラーとして市場の第一線で見てきた山中康司さんだ。
「最初は1984年のニュージーランドドル。当時のニュージーランドはインフレに悩まされており、通貨切り下げを行なうのではとの思惑から強烈に売り浴びせられました。そんな中、行なわれた総選挙で与党が敗北したんです」
当時の山中さんはバンク・オブ・アメリカに入行したばかりの新人ディーラー。NZドルも担当通貨のひとつだった。
■NZドルが1週間で20%暴落
「政府・中銀は銀行やブローカーに対してNZドルの取引を禁止しました。木曜日に市場が閉鎖され、週末をはさんだ月曜日も閉じたまま。再開されたのは火曜日でした。その間、通貨切り下げが行なわれ、再開後のNZドルは20%近く暴落しました。翌年には実質的なドル切り下げに等しいプラザ合意があり、戻したのですが」
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■ある日突然、固定相場へ移行した通貨も
山中さんが経験した2回目の取引停止は14年後。アジア通貨危機の余波が色濃く残っていた時期だった。
「前年に起きたアジア通貨危機への対策として、マレーシア政府はドルペッグ制から固定相場制への移行を発表し、外国人による通貨取引を禁じたんです。当時は『今日はタイバーツが売られそうだ』、『今日はインドネシアルピアだ』と日替わりでアジア通貨が売られていた時期。朝のうちに売られそうなアジア通貨を売っておけば勝てる相場でした。そんな中での突然の発表でしたから、銀行は大混乱になりました」
主要銀行がシンガポールに集まり、いくらで精算するか話し合われたという。
「市場閉鎖直前のレートなのか、固定レートなのか。結局、固定レートに近い水準で決まり、お互いの持ち分を解消して、やっと市場がクローズされました」
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■流行していたタイバーツの金利差狙い
通貨取引が停止となる事態は、これからも起きる可能性がある。
「2008年には人口30万人の小国アイスランドに投機マネーが集中したことから通貨が暴落しましたし、トルコや南アフリカなどの新興国通貨でもアジア通貨危機と似たような売り浴びせが繰り返されていますよね」
高金利は魅力だが、リスクも大きい。山中さん自身、かつて金利狙いのトレードで痛い目を見た。
「アジア通貨危機の直前、タイバーツへの投資がインターバンクで流行っていました。当時のタイバーツは米ドルなどの主要通貨に連動するバスケット制。しかし、金利は独自に設定していました。そのため複数の通貨を組み合わせることで為替変動リスクを避けながらタイバーツの金利を稼ぐことができる環境だったんです」
当時の山中さんは為替に限らず、「儲かるなら株であれ債券であれどの市場へ資金を投じてもいい」プロプライエタリー・ディーラー。タイバーツ取引を行なっていた。
「しかし、アジア通貨危機によりペッグ制が崩壊してタイバーツが暴落。それまでに稼いだ金利が帳消しになりました。アジア通貨なんて2000万ドル、3000万ドル程度の売り浴びせで崩せますし、高金利通貨には高金利になる理由がある。そこへ投資するのはよほど慎重な判断が必要です」
山中康司さん(その2)へ続く。
山中康司さんのコラムは全4回となっています。
⇒山中康司さん(その1)通貨が取引停止になるとき
⇒山中康司さん(その2)個人とAIが変えた為替市場
⇒山中康司さん(その3)月が赤道を横切ると相場が動く
⇒山中康司さん(その4)ローソク足を追い越す移動平均線
【プロフィール】
山中康司さん
バンク・オブ・アメリカや日興証券などでディーラーを務め、独立。FX会社のセミナーや連載などで活躍する。テクニカル分析の豊富な知識や活用法、自身で確立した金融占星術理論など、他に類を見ない方法論が個人投資家に好評。2018年11月には金融詐欺被害などの撲滅をめざして金融リテラシー協会を設立した。