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今週は、戸田裕大さんについて最終回です。

⇒戸田裕大さん(その1) 元メガバンクの為替ディーラー
⇒戸田裕大さん(その2) テニス、為替、10年で得た自信
⇒戸田裕大さん(その3)人民元は｢絶対的な買い通貨｣
⇒戸田裕大さん(その4)人民元のクセを利用する

■移動平均線で売買ポイントを探す

経常収支や実質実効為替レートから見ると人民元が買われる流れは続く――そう予想する戸田裕大さんの取引には人民元が多い。

「肌感覚になりますが14円台まで人民元安が進むと中国の物価がものすごく安く感じるし、17円まで来ると物価が高く感じる。これは購買力平価のような考え方です。こうした肌感覚に加え、移動平均線などのテクニカル分析も見ています。移動平均線を見ればトレンドの方向や戻りの水準を測る参考になります」

戸田さんが見ているテクニカルは主に2つ。ひとつが移動平均線だ。パラメータは次のように設定しているという。見慣れない数字もあるが、それぞれはカッコ内の期間を意識して設定した数字だ。

・週足：13週線（3か月）、26週線（半年）、52週線（1年）
・日足：5日線（1週間）、10日線（2週間）、20日線（1か月）
・1時間足：12時間線（半日）、24時間線（1日）、74時間線（3日）

「いちばん大事にしているのは長期の足です。ファンダメンタルズが示す方向と週足の方向が一致すれば、取引の方向が決まる。ただ、売買のポイントを見るには週足だと心もとないので日足、1時間足とチャートを短くしていき、『20日線まで落ちたら買おう』とか『売りの過熱感があるが1時間足RSIだとそろそろ安値だろう』といったようにオシレータなどのテクニカルを組み合わせます。また過去の高値・安値などのチャートポイントと合わせて見ていきます」

■基準値から見える政府の意向

人民元ならではの特徴を利用して短期で取引することもある。参考になるのは中国人民銀行（中国の中央銀行）が毎朝10時15分に発表する「基準値」だ。日本でいう仲値だが、市場の実勢レートで仲値が決まるのに対して中国の基準値を決めるのは政府・中銀だ。

「その特徴は過度な変動を抑える方向で決める、ということ。前日に100動いたとすると75くらいの変動にとどめるように設定するのが通常ですが、たまに50くらいの変動に調整することがあります。そうすると『政府は元高に誘導したいのか』と推測できる。人民元では政府の意向が強く働くため、政府の思惑に沿った方向でポジションを取ります」

■人民元のトレンド形成と値幅制限

政府・中銀の管理下にある人民元には独特のルールが多い。1日の変動幅が設定されていることも特徴だ。

「1日の値幅が上下２％ずつに制限されています。人民元高を誘発するような材料が出ても1日に上昇するのは２％まで、ということになります。そのため、消化しきれなかった上昇幅を翌日に消化することもあります。人民元のトレンドが出やすい特徴は、こうした値幅制限や、当局の意向も影響しているのでしょう」

長期的な上昇トレンドに期待した買いだけでなく、人民元独特の特性を理解すれば短期の収益チャンスも増えそう。日ごろ、取引する機会の少ない人民元だが目を向けてみるのもよさそうだ。

戸田裕大さんのコラムは全4回となっています。
⇒戸田裕大さん(その1) 元メガバンクの為替ディーラー
⇒戸田裕大さん(その2) テニス、為替、10年で得た自信
⇒戸田裕大さん(その3)人民元は｢絶対的な買い通貨｣
⇒戸田裕大さん(その4)人民元のクセを利用する

【プロフィール】
戸田裕大さん
2007年中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。外国為替業務を10年間担当し、ボードディーラーとして1日数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本のグローバル企業300社、在中国のグローバル企業450社の為替リスク管理に対する支援を実施。現在は「為替から世界を学ぶ」をコンセプトに個人投資家向けの為替セミナーや執筆を行なう著書に『米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方』。